【オンラインレッスンコラム:ギター】なぜフレディー・グリーンは4弦1音しか弾かなくなったのか?

いよいよ今年も残すところ1日のみとなりました。
皆様はどんな年の瀬をお過ごしでしょうか。

今回は、CMやメディアでも活躍され、ビッグバンドやアンサンブルの指導も行われている才能溢れるジャズギタリスト、加治雄太先生が綴って下さったシリーズの第三弾をお届けします😊

(まだご覧になっていない方のために...)
第一弾の記事はこちら↓↓

【オンラインレッスンコラム:ギター】ジャズとの出会い

今回は、CMやメディアでも活躍され、ビッグバンドやアンサンブルの指導も行われている才能溢れるジャズギタリスト、加治雄太先生が綴って下さった"ジャズとの出会い"シリ…


第二弾の記事はこちら↓↓
【オンラインレッスンコラム:ギター】フレディー・グリーンのリズムギター〜導入編〜

今回は、CMやメディアでも活躍され、ビッグバンドやアンサンブルの指導も行われている才能溢れるジャズギタリスト、加治雄太先生が綴って下さったシリーズの第二弾です&#x…


それでは、お楽しみ下さい♬♬

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こんにちは!
ジャズギタリストの加治雄太です。

ビッグバンドサークルに入部し、フレディー・グリーンのリズムギターについて説明を受けた18歳の加治くん。
「なんでフレディー・グリーンは4弦1音しか弾かないの?」
という疑問に直面します。
そこにはこんな深い理由が…フレディーとベイシー、バンド内の人間ドラマが垣間見えてきます。それでは行ってみよう!

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なぜフレディー・グリーンは4弦1本しか弾かないスタイルに行き着いたのでしょうか?
これには、ビッグバンドの編成やサウンドが大きく関係しています。


ジャズにおいてハーモニーの王様は言うまでもなくピアノです。
ピアノとギターが両方いるバンドの場合、お互いの音がぶつからないように配慮する必要がありますが、多くの場合はピアノに優先権があります。


さらに、一般的なビッグバンドには、サックス5本、トロンボーン4本、トランペット4本という、大勢のホーンセクションがいます。
彼らはメロディーやソロを担当するだけではありません。時にハーモニーを担当するのです。
ソリストの後ろで鳴っている、トロンボーン4本の美しいハーモニーを思い浮かべてみてください。
とってもゴージャス!複数の管楽器だからこそ出せるハーモニーはビッグバンドならでは!ですよね。


さて…そうなると…
「ギターはどんな和音を弾けばバンドに貢献できるのだろう…」

フレディー・グリーンもこの難題に立ち向かったに違いありません。
実際に、彼は当初バンド内において、3和音以上のコードを弾いていたと言われています。


「そんなに分厚い和音を弾かなくてもいいよフレディー!もうその音、ピアノが(トロンボーンが/サックスが)演奏してるから!」
という会話があったかどうかは定かではありませんが…

演奏の仕事の世界は、時にシビアで残酷です。
“ギターは必要ない”とバンドリーダーに判断されれば、そのギター奏者はクビとなります。
実際に、カウント・ベイシー楽団以外の様々なビッグバンドでは、結成当初や一時期のみはギター奏者が在籍していたものの、その後ギターがいない3リズムの編成が定番になっていった、というケースがほとんどなのです。

『クビになりたくないっっ!!』

試行錯誤した彼は、弾く和音の数を、3音→2音と減らしていき、1音でのリズムギターに行き着きます。

複数の弦をピックで弾くと、各弦の発音のタイミングには少なからずタイムラグが生じます。しかし、1本の弦しか音を出さないのであれば、タイムラグはなく、打点をより明確に示すことが出来ます。
正確でスウィングした四分音符をシンプルに演奏することで、フレディーはバンドでの信頼を勝ち得ていきました。ベイシー楽団では、“バンドメンバー全員がフレディーのギターを聴きながら演奏していた”のです。

また彼のリズムギターは、他のギター奏者にはない強力なビートを持っていました。フレディーのギターは、リーダーでピアニストであるカウント・ベイシーのピアノスタイルにも影響を与えます。
当初は、“ストライド奏法などの力強いタッチとたくさんの音数で、積極的にリズムを出す演奏”に定評のあったベイシーですが、次第に、“繊細なタッチも織り交ぜながら、少ない音数で、リズムの合間を縫うような演奏”へと変化していきます。
フレディーはベイシーを信頼し、ベイシーもまたフレディーに絶大な信頼を置いていたからこそ、両者は互いに影響を与え、変化と進化を重ねていきました。

4弦1音のみのリズムギターは“ハーモニー面よりリズム面を重視したスタイル”と言えます。
とは言え、ハーモニー面での役割を放棄しているわけではありません。
弾く弦の数が少ない分、“ヴォイシングを自由に動かしやすい”のも特徴。演奏するラインを工夫すると“単音なのにコード感を出せる”という奥深さがあります。

研究を重ねたフレディーは、バンド全体の音量が小さい場面では、まるでウォーキングベースやメロディーのような美しいラインを演奏しました。
聴衆は次第に彼のリズムギターに注目するようになります。
時代が進み、バンドのアレンジと演奏がより洗練されていく中で、ベイシー楽団のサウンドは、よりスペースを意識した、つまりリズムギターが映えるものへと変化していきます。
超脇役であるはずのリズムギターが、まるで主役のような注目を浴びるまでになったのです!
晩年には、フレディーは、ベイシーとバンドでの人気を二分するほどの看板プレイヤーとなっていきました。

(続く…)


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いかがでしたか?
フレディー・グリーンがどのように独自のスタイルを確立していったのか、見えてきましたか?

ベイシー楽団に長く在籍したトロンボニストであるAl Greyの言葉「Freddie GreenがいなかったらCount Basieも存在しなかった」は、“両者が互いを信頼し影響を与え合いながら、変化・進化を重ねていった”ことを示しているように思います。
ジャズの歴史に隠された人間ドラマ、本当に面白いですよね。

さて、ギタリストの皆様!ここで次なる疑問が出てきますよね?

「“単音なのにコード感を出せる”ラインはどうやって作ればいいの?」

次回以降の記事でご紹介していきたいと思います。乞うご期待!

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加治雄太

加治雄太 - yuta kaji - ジャズギタリスト Profile - プロフィール - 1984年10月22日生まれ。明治大学 Big Sounds Society Orchestra出身。現在、GENTLE FO […]

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